更新日時:2017.08.04 00:00
2017年8月4日
建築史部会では、「近世住宅の空間と構成」をテーマに、研究会を開催した。
日時:2017年7月22日(土)13時~17時
会場:大阪科学技術センター6階601号室
参加者:22名
プログラム
Session1 武家住宅
発表:大橋正浩(奈良文化財研究所)
「西高木家陣屋の御殿にみる近世武家住宅の公と私の構成」
コメント:赤澤真理(岩手県立大学)
Session2 民家
発表:安田徹也(竹中大工道具館)
「近世民家の境界について」
コメント:金澤雄記(米子高等工業専門学校)
Session3 総合討議
司会:鈴木智大(奈良文化財研究所)
大橋氏は、西高木家陣屋の御殿について、現存遺構・指図・造営および移従(わたまし)に関する文書の分析により、天保年間および明治期における建物の構成と各室の名称およびその使われ方を明らかにした。そして、既往の近世武家住宅研究にみられる「表」と「奥」の概念に加えて、「公」と「私」の概念を重ねることで、平面構成の原理が明確になることを示した。
赤澤氏は、大橋氏の発表に対して、在地旗本の御殿の空間構成を明らかにした点を高く評価するとともに、同程度の旗本屋敷や大名藩邸との比較検討への期待を示した。
安田氏は、近世民家について、屋内外の境界が開放的に変化することと、土座から板敷へ変化することを示した上で、その理由を様々な文献史料を収集することで探求した。前者の背景として、木綿の普及や建具の普及などを、後者の背景として清潔さへの志向などを見出した。
金澤氏は、安田氏の発表に対して、これまで間取りや構造の分析に重点が置かれてきた民家研究における新たな視点であることを評価した。一方、民家が開放的になった理由については、防犯意識の低下や接客空間の発展なども関連する可能性を提示した。
総合討議においても、引き続き両発表に対する質疑が続き、研究手法の妥当性や研究の展開の方向性などについて活発な意見が交わされた。
(文責:鈴木智大)
研究会の様子