更新日時:2016.11.22 00:00
2016年11月22日
建築史部会では、「日本の建築空間と境界」をテーマに、研究会を開催した。
日時:2016年11月19日(土)13時~17時
会場:大阪科学技術センター6階601号室
参加者:10名
プログラム
開会のあいさつ:野村正晴(関西大学)
司会:鈴木智大(奈良文化財研究所)
発表1:赤澤真理(岩手県立大学)「女房装束の打出により演出される寝殿造の内と外」
発表2:米澤貴紀(名城大学)「神仏習合儀礼空間を形作る境界・結界」
コメント:加藤悠希(九州大学)
ディスカッション
赤澤氏は、寝殿造における儀礼に際した「打出(うちいで)」と呼ばれる装束による演出の変遷を絵画・文献より明らかにした。そして、摂関期における打出の出現、院政期における盛行、室町時代における消失には、宮廷儀礼における女房(にょうぼう)の位置づけの変遷が関連すると論じた。
米澤氏は、神仏習合儀礼における空間のつくり方について、三輪流神道に関する文献により明らかにした。そして、神道灌頂(かんじょう)が密教の灌頂儀礼を基盤に成立し共通点が多いこと、鏡を用いた装飾や「清浄な空間」をつくる意識に神道らしさがあらわれることを論じた。
加藤氏は、赤澤氏の発表について、打出の消失と、寝殿造の蔀戸から書院造の遣戸への移行や、寝殿造の「内と外」という概念から書院造の「表と奥」という概念への移行と重なることを評価した。また米澤氏の発表について、廃仏毀釈以前には社殿に仏教的な調度等が付加されていたことと、神仏習合儀礼における鏡などによる荘厳に、共通性を見出せるとの指摘があった。
つづいて参加者からも、儀礼と文化、裏と表、復古主義、顕密仏教、東アジアなど、様々な観点から意見があがり、活発な議論が交わされた。
(文責:鈴木智大)
研究会の様子