更新日時:2023.09.11 07:40
建築史部会では、「歴史的建造物の内装の技術史」をテーマとした研究会を開催した。
日時:2023年3月18日(土)13時30分~17時
会場:大阪科学技術センター703号室+オンライン配信
参加者:54名
主催:日本建築学会近畿支部建築史部会
共催:家具道具室内史学会
後援:日本建築学会建築歴史・意匠委員会日本建築史小委員会
プログラム
趣旨説明:⾦玟淑(京都⼤学)
発表: 鄭貞男(建築⽂献考古スタジオ)
「昌徳宮の熙政堂・⼤造殿の塗褙・鋪陳について」
発表:岡野法⼦(⽂化財建造物保存技術協会)
「旧前⽥家本邸洋館の内装について」
講評:⼩泉和⼦(家具道具室内史学会会⻑)/⾦東旭(京畿⼤学校名誉教授)
総合討議
司会:鈴木智大(奈良文化財研究所)
逐次通訳:⾦玟淑(京都⼤学)
本研究会では、歴史的建造物の内装に焦点を当て、日韓の事例発表を通して材料・技術に関する調査研究の現況と復原整備の方針について議論した。
鄭貞男氏は20世紀以前の韓国の宮殿における伝統的な塗褙*と鋪陳**について説明した後、2021年から公開のために整備工事を進めている昌徳宮の熙政堂・大造殿(1917年火災、1918年~1920年再建)の内装調査の結果と整備方針について発表した。
岡野法⼦氏は、1920年代後半に建てられた旧前⽥家本邸洋館の保存修理工事(2016年~2018年)の際に行った内装調査の結果と書斎・寝室の内装復原の方法について発表した。岡野氏の発表で、ガラス乾板の感光特性を利用して古写真から色を再現する方法は韓国ではまだ試されたことがなく、興味深い発表であった。
続いて、小泉和⼦氏と金東旭氏より総評がなされた。
まず、小泉和⼦氏は日韓の事例の建物の建立年代が違うため、史資料の残存状況が異なる中、綿密な調査をもとに内装復原が行われていることを高く評価した。また、かつては大量生産された工業製品が内装に使われたとしても現在は入手困難であることを指摘した。
次いで金東旭氏は韓国建築史における昌徳宮の熙政堂・⼤造殿の位置づけについて述べた後、今後同様の内装復原が増えてくる可能性を指摘した。さらに、内装調査方法や復原手法については日韓で技術的協力関係を構築することが重要であることを強調した。
*塗褙:壁・建具・天井・床などに紙や布を貼ること
**鋪陳:敷物、壁面飾り
(文責:⾦玟淑)
会場の様子
総合討議の様子