更新日時:2019.09.13 00:00
2019年9月13日
建築史部会では、「小屋裏の建築史」をテーマに、研究会を開催した。
日時:2019年8月25日(日)13時30分~17時
会場:大阪科学技術センター605号室
参加者:40名
プログラム
発表:玉井浩登(京都工芸繊維大学)
「中世寺社建築に見られる内屋根について」
発表:阿部文和(大阪歴史博物館)
「近代に作成された棟札の書式とその性格」
コメント:岸泰子(京都府立大学)
総合討議
司会:鈴木智大(奈良文化財研究所)
本研究会では、若手研究者を発表者に迎え、歴史的建築の小屋裏をめぐる課題について、議論をおこなった。
玉井氏は、室町時代後期以前の重要文化財建造物に残された内屋根について、網羅的な検討をおこない、その形態について、構造・材料・範囲などの観点から分類した。その上で、内屋根の機能について分析し、さらにその歴史的な変遷を示した。
阿部氏は、享和3年(1803)に松浦久信が著した「匠家故実録」に示された棟札の特徴をまとめた。そして、江戸時代後期から近代の歴史的建造物の棟札に、同様の特徴を持つ事例が多いことを示し、特に竹中家、清水家、辰野金吾らによる採用の意義を考察した。
岸氏は、両氏の発表について、その研究対象は異なるものの、ともに「機能」の解明を目指したものとして評価した上で、課題を示した。玉井氏の発表については、内屋根およびその機能の定義の曖昧さ、内屋根採用の社会的な意義の解明の必要性を示した。阿部氏の発表については、「匠家故実録」型棟札の定義と意義、近世以前の事例との関わりの解明を求めた。
つづく、総合討議でも、両発表の研究対象の定義をめぐり、各方面から事例紹介や再考の切口の提示がなされるなど、活発に意見が交わされた。
(文責:鈴木智大)
研究会の様子